「Aの次にBをしてね。」
「CはXさんに、DはZさんに、私じゃなくて、二人に報告してね。」
テキパキと新人に指示をするマネージャーのMさん。
ところが今年の新人Kさんは、Mさん曰く、ちっとも指示を守らないのだそうです。
「どうしてAの次がBなの? Bが先だとダメなんですか?」
「マネージャーのMさんじゃなくて、どうしてXさん、Zさんに報告なんですか?」
私がこう質問すると、Mさんはちゃんとその理由を説明してくれました。
「その理由、Kさんにも伝えている?」
私がさらに質問すると、Mさんは「いいえ」と一言。
「だって、聞かれていないから」でした
私も遠い昔の新入社員だったころ、先輩の指示がどうも非合理的に思えて、もっとやりやすい効率的なやり方があるのに、こっちの方が早いのにと思って自分なりにやり方を工夫して仕事を済ませ、得意げに終了報告をしたところ、こっぴどく叱られたことがありました。
「言われたとおりにやれ!」
私はなぜ叱られなければいけないのか、全く理解できず、猛然と反発しました。
仕事のやり方を工夫して時間短縮できたのに、褒められることはあっても叱られる覚えはない! くらいのことを恐らく言ったのではないかと思います。
とにかく生意気だったので・・・
すると、当時のリーダーが諭すように説明してくれました。
先輩の指示は間違っていなかったこと。
ただ、なぜそう指示したのか、その「意味」「理由」またそれをやる「目的」の説明が欠けていたこと。
どんな仕事にも全て意味があり、なぜそれをやるのかの「理由」があり、何のためにやっているのか「目的」があるということ。
先輩や上司からの説明がなかったら、自分からそれを確認すること。
意味・理由・目的を知らずにやるのはただの作業に等しく、それらを理解して取り組むことでそこに工夫や想いが生まれ、初めて仕事になり創発が生まれるということ。
「まだ新人なんだから、つべこべ言わずに言われたことをやるのが筋じゃないですか?」
と不満げなMさんですが、それは違うとはっきりお伝えしました。
新人であれベテランであれ、一般社員であれマネージャーであれ、「やる気」を作用する大きな要因に、「仕事の意味・目的」を理解しているかどうかがあります。
つまりはただの作業か、本物の仕事かの違いです。
説明する方はわかっているので、相手にはついつい説明を忘れてしまったり省略してしまったりしがちですが、実は、これこそが本当に大切なことなのです。
これさえ理解・納得できていれば、手順などのやり方はどうでもよいくらいに大切なことなのです。
これは日常生活でも同じです。
小さな子供にただやらなければならないことをやれと言うのではなく、どうしてやった方が良いのか、やるべきなのか、又はやってはいけないのか、その意味や理由を子供にもわかるように説明すると、子供はちゃんとその意味や理由を覚えていて、後は自分で考えて必要な行動を取るようになります。
絶対に言ってはいけないのは、「とにかくやって」「つべこべ言わずにやって」「そんなこと知らなくてもいいからやって」「上からの指示だからやって」です。
あなたはメンバーが作業ではなく仕事が出来るよう、必要な説明をちゃんとできていますか?
そのためにまず、あなた自身がそれぞれの仕事の意味・理由・目的をしっかりと理解できていますか?