大手企業のAマネージャーが涙目で私に訴えました。
「僕はこんな状態いやなんです。うちの部署ばかりがいつも異常に忙しい。それなのに、上は僕らの仕事の価値を評価してくれない。全く不公平です。もうずっとこんな悲惨な状態なんです。部長は頼りないし。他責だと言われても、だったらどうしたら他責じゃなくなるのか教えてくださいよ!」
普段から周囲への文句や不満を口にすることが多いため、Aマネージャーの言い分に「またか・・・」と最初は迷惑顔で聞いていた周囲の人たちも、Aマネージャーの感情が爆発して驚いたようでした。
Aマネージャーはそのまま続けました。
「僕だって自分が他責なのはわかってる。マネージャーだからしっかりしろと言われ続けて、そんなことも分かってる。でも、どうしたらいいのかわからないんですよ。」
私は、Aマネージャーの訴えを彼だけの問題ではなく、その場にいる全員の問題、すなわち部門の問題として一緒に考えてみることを提案しました。
皆さん、真剣に意見を出し合い、Aマネージャーに寄り添っています。それでも、会社が自分たちの仕事に対して過小評価だというところで話が止まってしまいます。
私は黙って話を聞いていましたが、素朴な疑問を投げかけてみることにしました。
「さっきから話題に上っているその仕事、上層部は評価していないということですが、もし止めてしまったらどんな問題が起こるんですか?」
その場にいた全員が、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、「何をバカなこと言うんだ。この部外者は。」と最初は取り合ってくれませんでした。それでも私がその後もいくつかの質問を重ねると、「もしかしたら、すごく大切な仕事だと思って時間を割いていたけど、本当は他で代用できるのかもしれない。」という仮説が立ってきました。
みなさん、まるでコロンブスの卵を発見したかのように晴れやかな顔をしています。
一人のマネージャーさんが私に質問なさいました。
「どうして止めたらどうか、と思ったのですか?」
「私は仕事の専門的な事や中身は全く分かりません。けれども、ボトルネックとなっている仕事を会社の複数の上層部の方が過小評価しており、一方、皆さんはとても重要だという。どちらが正しいかは分かりません。どちらも間違っているかもしれません。でも、見方を変えることで違うものが見えてくるかもしれないので、そのお手伝いをしただけです。」
一人のマネージャーさんがポツリと呟きました。
「どうしても自分の考え、固定観念に縛られますからね。」
するとAマネージャーが真剣な表情で言いました。
「自分も固定観念に縛られていただけなのかもしれません。もう一度、真っ白な状態で考えてみます。」
人は誰しも、自分のモノの見方、考え方があり、それに捉われてしまうものです。だからこそ、多種多様な人の意見に耳を傾け、柔軟な思考を持つことで、ネガティブな状態に陥ったとしても泥沼から這い上がるきっかけを掴むことができるのかもしれません。
Aマネージャーの場合、unhappyな状態が10年以上続いているので、そう簡単に脱出できるとは限りません。
それでも「どうしようもない」という諦め&他責思考から、「見方、捉え方を変えみよう」と思えただけで大きな進歩であり、happyへのきっかけとなる一歩を踏み出したのではないでしょうか。
何より、彼の発言を聞いていた他のマネージャーさん達の温かい応援の声が、Aマネージャーを後押ししてくれることと思います。