「メンバーから自然と相談や報告が上がってくるチームを作りたい」
「報連相を言わなくてもちゃんとできるメンバーにしたい」
これらは、マネージャーの根深いお悩みの一つです。
この時、私は質問します。
「報連相って、部下にとっては『義務』ですか?それとも『責任』ですか?」
「両方だ!」という答えが返ってきますが、その発想こそが、あなたのチームから報連相を奪っている根本的な原因かもしれません。
報連相を義務や責任として強要しても機能しない構造
報連相を「義務」や「責任」としてメンバーに強いるのは、その時点で発想が間違えています。
なぜなら、人は義務であろうと責任であろうと、自分にメリットを感じないことは、できればしたくないからです。
例えば、年金の支払いは国民の義務ですが、将来のメリットを感じない人は、「払わない」選択をしている人もいます。
これらは、行動経済学の視点から見ても、明らかです。
つまり、「コスト(報連相の手間や時間 あるいは 年金支払額)に見合うメリットがない」と判断された行動は、誰かに強要されなければ継続しないのです。
報連相しても当たり前と受け取られたり、何の反応もなかったり、報告したことでかえって詰問されたりしたら、メンバーは報連相したいとは思いません。
報連相は、メンバーに手間や時間をかけるコストです。
そのコストをメンバーが負担する動機(メリット)がなければ、メンバーにとっては排除したい行動になってしまうのです。
私自身も、20代の頃は、報告は義務、相談は面倒だと思っていました。
メリットを感じなかったし、時間の無駄だとさえ感じていました。
人が報連相したくなる心理学
そんな私にも、一生懸命に報連相をした上司がいました。
どんな小さな報告にもレスポンスがとても良く、認めてもらった感や共感してもらった感をとても得られたので、報告しに行くのが楽しかったことを覚えています。
やる気スイッチをますます押してもらえるし、多少落ち込んでいても、自然と元気を注入してもらっていた気さえします。
これらを踏まえて、報連相のメリットは、内発的動機づけに関わる自己成長の機会であり、心理的安全性のバロメーターだと考えます。
具体的には、次の3つの心理的欲求の充足に関係します。
- 有能感の充足: 「この報告でチームに貢献できた」「自分の気づきが活かされた」と感じたい。
- 承認欲求の充足: 「(内容に関わらず)報告したこと自体を認めてもらえた」「反応があった」と感じたい。
- 関係性の深化: 「相談することで、上司と協働できている」と感じ、安心感を得たい。
メンバーから報連相がないのは、メンバー個人の資質の問題だけではなく、マネージャーのあなたが、この3つのメリットを提供できていない責任の一端があるということです。
マネージャーが取るべき3つの具体策
「報連相しろ!」と命令するのではなく、「メンバーに自然にそうしてほしい」のであれば、私のかつての上司がそうであったように、報連相したくなる環境、すなわち心理的安全性の高い状況をこちらが作ればいいのです。
メンバーが、報連相をしたくなる相手にあなたが変わるため、意識すべき具体的な行動を次の3つです。
1. レスポンスは最速で「感謝」を伝える
報連相の内容の良し悪しに関わらず、報連相した行為そのものに対して「ありがとう、助かるよ」と最速で伝えましょう。
これで「承認欲求の充足」を満たし、次の報連相への心理的ハードルを下げます。
内容へのフィードバックはその後で構いません。
2. ネガティブな報告は「一緒に考える」姿勢で対応する
失敗や問題の報告こそ、報連相の最大の価値です。
報告に対して詰問したり、感情的に反応したりすることは絶対にやめてください。
報告を中立的に受け止め、「教えてくれてありがとう。一緒にどうするか考えよう」と返すことで、メンバーに安心感(心理的安全性)と協働感(関係性の深化)を提供できます。
3. 報連相を「質問」で返す
報告や相談に対し、一方的な指示で終わらせず、必ず「あなたはどう思う?」「他にはどんな解決策がある?」と質問で返しましょう。これは、メンバーの有能感を刺激し、「この上司に報連相すると、自分の思考が深まる」というメリットに変わります。
報連相のあり方は、チーム文化そのものの鏡です。
『報連相しやすい組織』こそ、信頼と自律の両輪が回る組織です。
情報共有の断絶は、必ず組織全体のパフォーマンス低下につながります。
「報連相しろ!」ではなく、「報連相したくなる環境づくり」「報連相したくなる上司」を、マネジメントの責任として捉え直しましょう。
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