どうにも過保護なマネージャーのSさん。
Mさんは危なっかしい自分を案じてくれるSマネージャーの気持ちをありがたいと思いながらも、「ほっといてほしい」「失敗する自分も見守ってほしい」と思っていました。
「僕に詳しく状況説明して。ちゃんとケアしてあげるから。」
今日もSさんはMさんにこう話しかけるのですが、意を決したMさんはSさんにNo!を伝えました。
「自分でちゃんとできるんで大丈夫です。」
「大丈夫って、この前も上手くいかなかったじゃないか。また無駄な時間使う羽目になったらどうするんだ。Mさんには今期はちゃんと目標達成させてあげようと思っているんだ。だからちゃんと話してくれないと困るんだよ。」
半ば怒り気味に迫ってくるSさんに、Mさんは負けそうになりましたが、それでも頑張りました。
「ありがとうございます。気持ちはとてもありがたいです。けれども、自分の力で頑張りたいんです。」
「自分の力って、それじゃあ目標達成、難しいかもしれないだろう!」
Sさんの言葉は図星です。
しかし、だからと言って、Sさんにおんぶに抱っこでいつも助けてもらってばかりでは、自分は全く成長できないままだとMさんは思っており、ここは何が何でも自分自身の成長をかけて、自分の力でやり抜きたいと思っていました。
「そうかもしれません。Sマネージャーの仰る通りです。けれどもいつまでもマネージャーに頼ってばかりでなく、僕も独り立ちしたいんです。僕の目標が未達だとマネージャーにもチームにも迷惑をかけてしまうことは承知しています。ですから必死で頑張ります。どうしても手詰まりになって困ったら、Sマネージャーに相談させてください。それまでは、どうか見守ってもらえませんか。僕がどれくらいできるか、頼りない事は分かっていますが、どうかお願いします。」
最初は鬼の形相で話を聞いていたSさんでしたが、Mさんの必死の訴えに、次第に自分の過保護ぶりを感じることがあったのか、ぶっきらぼうではありますが穏やかな口調で
「わかった。」
とただ一言言っただけでした。
驚いたのは、一連のやり取りを聞いていた他のメンバー達でした。
「よくSさんにNO!って言えたね。しかも『わかった』って言わせて、スゴイ!」
同僚の言葉にMさんは苦笑いです。
「いや、うちの子がさ。『パパやめて』と言わないで、『ゆうちゃん、〇〇したいから、パパは△△して』て言うんだよ。
そう言われたら、『そっかぁ、ゆうは〇〇したいのか』と思うじゃん。
これだ!と思ったんだよ。
Sさんの申し出を否定とか拒否するんじゃなくて、『自分はどうしたい』『Sさんにはこうしてほしい』『Sさんには感謝している』を言おうと思ってさ。
子供から学んだわけ。あいつ、上手いんだよな。こういうの。」
Mさんの解説に一同納得の同僚たち。
Sマネージャーに面と向かってNoを突き付けるよりも、自分はどうしたのか、自分はどう考えるのかをしっかりと自分の言葉で伝えることが大切だと彼らも理解しました。
確かにSさんの過保護度合いがもう少しトーンダウンしてくれれば言うに越したことはありません。
しかし、マネージャーのそれはなかなかどうして手ごわいのです。
そのことを不満に思いながら我慢するよりも、「じゃあ、自分たちはどうする?」と自分たちがどう行動すればよいのかと考えた時、もっとWantとNeedをSさんに伝えた方が良いと気がついたのです。
それは、受身ではなく自分発信・自分主導で物事を進めていく彼らの知恵です。
確かに過保護すぎるマネージャーはメンバーを受身にしてしまいます。
しかし、そんなマネージャーに対して自分たち主導のスタンスでいようと対処法を考えたMさん。
その取り組み姿勢と学ぶスタンスがあるならば、今期目標も厳しくともきっと達成できるに違いありません。