もしかしたら・・・ といくらマネージャーが思っても、私たちは専門家ではないため、メンバーの問題行動に対して「診断」を下すことはできません。
単なるワガママや性格の問題なのか、それとも遺伝子の問題なのか。
上司の勝手な思い込みで「あの子、発達障害だから」などと言おうものなら、巡り巡って本人の耳にそれが入ってしまった時、どんなにそのメンバーを傷つけてしまうか想像してみてください。疑いを持つことがあったとしても、決して不用意にそんな言葉を口に出してはいけません。
かつて私がどうしようもないブラックちゃんだった頃、当時の上司が私の事を「パーソナリティ障害なんだ」と言っていたという話を聞きました。否定された怒りよりも、向き合ってもらえない哀しみを覚えました。あまりにもショックで、自ら専門家を受診しました。結果、ただの性格悪い子だったのですが・・・
素人の不用意な発言は、一歩間違えれば取り返しのつかない事態を招く恐れもあります。そのためにも、疑いを持ったら専門家へ繋ぐことが肝心です。
大企業であれば、そのような相談専門窓口があったり、人事部で対応可能かもしれません。しかし、世の中の多くの企業では、そのような環境にはありません。
では、マネージャーはどうするのか。
まず必要なコトは、専門家へ繋ぐためには、当該メンバーに「自分が自分の仕事やチームに支障をきたす問題行動を起こしている」という自覚があるかどうかを見極めることです。
遅刻をする。忘れ物をする。お客様からお叱りを受けた。など、の分かりやすい場合は、本人にも自覚があるでしょう。
難しいのは、本人に自覚がない場合です。
自分の興味のあることにしか取組まない。相手の気持ちがわからない。などの場合には、なぜそれが問題行動と捉えられるのか気づいてもらえないことが多いです。お客様から大きなクレームを頂いてさえ、なぜ、自分の言動にお客様がご立腹なのかが分からないこともあります。彼または彼女の世界ではそれが「普通」のことなので、その普通を否定されること自体、理解できないようです。
本人に自覚がない場合、「そんなの常識で考えてわかるだろう!」と一喝するのは最悪です。かつて私は、「常識で考えればわかるでしょ!」を連発していたわけですから、裏返して言えば「あなたは非常識」と言い放っていたようなものでした。
その後、どうしたか。
じっくりと時間をかけて、もつれた糸を優しくほぐすように、子供に相対するように、メンバーちゃんと向き合うことから始めました。まず、彼らの考えや気持ちをじっくりと聴く。時に、4~5時間ぶっ続けでひたすら話を聞いたこともあります。ひとしきり話を聞いた後で、彼らのその行動が、彼らが良かれと思ってしたことでも結果、本人の仕事やチームに対して悪影響を及ぼしている、または及ぼす可能性があることを、一つ一つ丁寧に、客観的事実をもって説明します。決して感情的にならずに。
例えば。
メンバーちゃんが一生懸命説明した商品Aについて。メンバーちゃんはこの商品がとても良いものだと思ったからお客様に何が何でも説明したかった。この話を聞いてほしかった。しかし、お客様から頂いた面会の時間は30分。これは相手にとっても自分にとっても貴重な30分。この30分をいかに有効に使うかを考えた時、メンバーちゃんが言いたいことをひたすら喋っていたら、もし、お客様が何か質問したい事があったり新たな提案を望んでいたとしても、お客様が話す時間を奪ってしまう。それは本来、メンバーちゃんだって望んでいないはず。
ところが、頭で分かっていても、いざお客様を前にすると、どうしても自分の言いたいことを言わずにはいられなくなる。相手がどんな表情をして聞いていたのか記憶にない。話し終わった後、自分は満足したが、次のアポイントがなかなか取れない。思い返せば、最後にお会いした日、お客様は笑顔がなかったように思うし、口数が少なかったかもしれない。
「言わずにはいられないんです。抑えられないんです。」とポツリとつぶやくメンバーちゃん。ここで初めて、メンバーちゃんは自分の関心あることのみに走りがちな行動が仕事に支障をきたしているかもしれないと思います。それまでは、自分が良いものをお客様にも説明してあげるべきだという、ある種の義務感さえ抱いていたのですが、それは自分の独りよがりで「仕事」「チーム」という枠組みで考えた時、必ずしも自分の興味関心に走ることは適切でないと気がつくのです。
では続きはまた明日。