ストレスチェックやエンゲージメントサーベイの結果を見て、「ああ、うちの社員はモチベーションが低いな…」で終わっていませんか?
多くの企業がせっかく高額な費用を払って得た貴重なデータが、ただの「社員の愚痴集計」になってしまっているのが現実です。
しかし、その数字には、あなたの会社がもっと儲かるためのヒントが隠されています。
エンゲージメントスコアを、単なる「社員満足度」ではなく、「経営指標」として活用するための具体的な考え方をお伝えします。
データはある。しかし、その先の「行動」がない理由
エンゲージメントサーベイは、今や多くの企業が導入しています。
自社や自部署のエンゲージメントスコアが、業界平均や全社平均と比べてどれくらいか、というデータは手元にあるはずです。
しかし、その数字が何を意味し、どうすれば改善できるのかがわからない。
「働き方改革」や「チームビルディング研修」など、エンゲージメント向上に繋がりそうな施策を打っているが、それが本当に効果があるか分からない。
なぜでしょうか?
それは、「エンゲージメントスコアの改善が、どれだけ会社に利益をもたらすか」という具体的な理論につながっていないからです。
エンゲージメントを「儲かる投資」に変える考え方
エンゲージメントスコアを改善するための取り組みは、「将来の利益を確実に生み出すための投資」です。
国内外の調査で、エンゲージメントと業績には強い相関関係があることが証明されています。
ギャラップ社が発行した最新の『State of the Global Workplace 2025 Report』では、マネージャー向けのコーチングや研修を受けたチームは、受けていないチームに比べてエンゲージメントが最大18%向上し、マネージャー自身のパフォーマンス指標も20〜28%向上したことが示されています。
また、ギャラップ社の調査では「チームエンゲージメントの70%はマネージャー次第」とも言っており、現場のマネージャー育成やコーチングが最も効果的な投資であることが示唆されています。
国内のリンクアンドモチベーション社が発表した研究結果では、エンゲージメントが営業利益率や労働生産性にプラスの影響を与えることを伝えています。
具体的には、エンゲージメントスコア1ポイントの上昇につき、当期の営業利益率が0.35%上昇、翌四半期の営業利益率が0.38%上昇と、エンゲージメント向上は、比較的短期間で営業利益率の向上に寄与するようです。
さらに、エンゲージメントスコアが高い企業は、翌年の売上/利益の伸びが大きくなるとも伝えています。

(出典:PRTIMES 「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果を公開~売上/利益との相関、伸長率のバラつきとも関連の可能性~ | 株式会社リンクアンドモチベーションのプレスリリース より画像をお借りしています)
エンゲージメントが高い組織では、離職率の低下・生産性の向上・顧客満足度の向上など、複数の経営指標が同時に改善するため、結果として利益率も上がりやすくなります。
これらのデータは、エンゲージメントの向上を「社員のため」という福利厚生的な施策ではなく、「会社の業績向上」という戦略的な投資として捉えるべきであることを示唆しています。
実行へのステップ:あなたの会社の「宝」を掘り起こす方法
では、実際にどうすればエンゲージメントを「儲かる投資」に変えられるのでしょうか。
ステップ1:スコアの「現状」を知る
まずは自社のエンゲージメントスコアを、全社平均や業界平均と比較してみましょう。
どの項目(上司への信頼、キャリア展望など)のスコアが特に低いか、深掘りすることが重要です。
ステップ2:「目標」を設定し、「投資対効果」を計算する
最も重要なのは、具体的な目標と、その投資対効果を試算することです。
例えば、売上高 1億円の部署があるとします。
その部署のエンゲージメントスコアが、全社平均を大きく下回る35点だとします。
このスコアを、全社平均の50点まで15ポイント改善できたと仮定してみましょう。
リンクアンドモチベーションのデータを使った場合、エンゲージメントスコアが10ポイント改善すると、当期の営業利益率は3.5%向上することが期待できます。
シミュレーションすると以下のとおりです。
売上 1億円の部署
現在の営業利益率:5%と仮定
現在の営業利益:1億円×5%=500万円
新しい営業利益率:5%(現状)+3.5%(向上分)8.5%
新しい営業利益額:1億円×8.5%=850万円
このチームへのコーチングや研修などの投資が仮に50万円だったとすると、「50万円の投資で、350万円の営業利益増加」という、費用対効果の明確な事業計画が立てられます。
営業利益率が上昇するということは、同じ売上高でもより多くの利益を生み出せる、つまり「生産性が向上している」状態を意味します。
エンゲージメント向上によって、コスト削減や業務効率化、付加価値の増加などが実現し、結果として会社全体の生産性が高まるのです。
成功のカギは、現場のマネージャーやリーダーを巻き込むことです。
エンゲージメントサーベイは、社員の「不満」を測るものではありません。
それは、会社がもっと成長するための「潜在的なエネルギー」を測るものです。
その数字を、単なる結果で終わらせず、「儲かる投資」へと変える。
これが、これからの経営に求められる新たな視点です。
ぜひ、あなたの会社のエンゲージメントスコアを、もう一度見つめ直してみてください。
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