誰だって変わることができる

お掃除のおじさん 一隅を照らす

近所に新しくできた区立保育園は常に電子錠の扉が閉まっており、保護者の方がカメラ付きインターフォンで「0歳 〇子です」と中にいる先生と連絡を取り合い、確認が取れると開錠されて子どもたちと共に中に入れるようです。
この保育園の門周りを「for Kids」と背中にロゴが入ったTシャツを着ている年配の男性がいつもお掃除しています。
私が毎朝ここを通る時、小さなお子さん連れのお父さんやお母さんが保育園に向かって急ぎ足で向かっているのですが、そのお掃除の男性は「〇〇ちゃん おはよう!」「△△くん おはよう!お父さん おはようございます!」とお掃除の手を動かしながらも笑顔で元気よく声をかけています。

今朝もいつも通りの光景を目にしながら「働くパパとママは、朝は大忙しだね」などと一人思っていると、まだ1歳になるかならないかの小さな男の子をバギーに乗せた若いお父さんがやってきました。

「ゆうすけくん、おはよう。お父さん おはようございます。」
笑顔で挨拶するおじさんに、お父さんが話しかけました。
「全部の子どもたちの顔と名前、憶えているんですか?」
「はは。大体は。0歳の子達はまだ覚えきれていないんですが、他は大体。」
笑顔で答えるおじさんにお父さんが言いました。
「そうですか。先生だって、担当じゃない子供は覚えていない先生もいるようなのに。おじさんのような方が門前にいてくれたら、僕らも安心です。」
「そんなこと言われたの初めてです。ありがとうございます。僕ら、ただ掃除しているだけでもいいんですけど、子供は可愛いですし、お父さんやお母さん達には気持ちよく仕事に行ってもらいたいし、子供たちにもココは楽しいとこだと思ってほしいから。僕ら、保育はできないから。掃除しかできないけど、みんなの顔と名前を憶えて呼びかけるくらいはできるし、それが防犯にも繋がったらいいかなと、勝手に思ってね。」

私は足を止めて、ついついこのおじさんの話に聞き入ってしまいました。
年の功は70歳は優に過ぎていると思われるこの男性。
園の周囲の清掃がお仕事のようですが、誰に言われるでも頼まれるでもなく、その清掃の仕事にご自分なりの意味づけを行い、子供たちと保護者の顔と名前を覚え、園にやってくる子どもたちが少しでも気持ちよく楽しい時間を過ごせるように、保護者の皆さんが安心して子供たちを預けることができるように、このおじさんなりに決められた仕事プラスαのできることを行っているのです。
なんてすばらしいんでしょう。
だからこの方はいつも楽しそうに園の周りを大きな竹ぼうきで綺麗に掃き清め、毎朝通る私にまで笑顔で挨拶をしてくれるのですね。

何をするにも心の持ちよう。楽しくするのもつまらなくするのも、ただ義務的にこなすのか、プラスアルファの幸せエッセンスを加えて笑顔で行うのか。

このお掃除のおじさんの笑顔を見ていて、あるストーリーを思い出しました。
「人であふれた駐車場」

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