かつて私が勤めていた企業には、マネージャーになると、通称「クリ8」ならぬクリエイト休暇が付与されました。
通常の年休とは別に、8日間連続で休んでリフレッシュして、それこそクリエイティブなモノ・コトを生み出してください、という意味あいだったと記憶しております。
当時は年休消化もままならず、前年度分と併せて40日まるまる年休が余っている上に、クリ8まで頂いていしまい、それでなくても忙しくて休めないのに、「どうやって休むんだよ!」とボヤいているマネージャーがたくさんいました。
あの頃は「24時間働けますか!?」の時代だったので、休まないことを美徳とする風潮もあったかと思います。
シフト上は年休やクリ8扱いでも、実際には会社に出てきて仕事をしているという、なんとも意味のない行動のマネージャーも大勢いたのを覚えています。
かく言う私はというと、年休前年度分は上期のうちにほぼ消化していましたし、クリ8も堂々と取得していました。
「明日から長期でお休みいただきますが、不在時はメンバーの〇〇が対応いたしますので、何かございましたらよろしくお願いいたします。」
と、休みの前日は、お客様や関係先への連絡で、逆に忙しかったものです。
マネージャーこそ堂々と休むべきだと私は思っています。
そうしなければメンバーが休みづらいという理由からではありません。
「マネージャー不在時にこそメンバーは育つ!」という確固たる思いが私にはあるからです。
私がピッカピカの新入社員だった時、新入社員研修を終えて配属された部署は、泣く子も黙る繁忙期の真っただ中。
チームリーダーどころか、チームの先輩みんなが外出で不在なことはしょっちゅうでしたし、全員が出張で不在という日々も度々ありました。
今と違って当時はインターネットや携帯電話なんてまだ普及していません。
お客様や関係先からの連絡は全て会社に電話かファックスでやってきます。
それらを分からないながらに一つ一つ仕分けをし、急ぎのモノは指示を受けながら対応し、ということを否が応なしに行った私は、半べそかきながらもいつの間にか仕事を覚え、また、何をしなければお客様にご迷惑となり、何をすればお客様や周囲にとって良いのかということを実践を通じて覚えました。
幸か不幸か私のチームの先輩たちは、年休取得も前向きな方達でした。
「尾藤、不在中はよろしくな! お前の名前、お客様には言ってあるから。銃後の守りがバッチリだから安心して休めるよ。間違っても休み中に、家に電話するなよ!」
先輩方はこんなセリフを残して夏季休暇や連続休暇に入るのですが、私は任される不安と喜びとがごっちゃに入り混じった状態で必死に留守を守るべく、日々、奮闘していました。
当時は分かりませんでしたが、あれらの半べそ経験があったから鍛えられた。他の同期より一歩も二歩も先を歩むことができたのかな、と今は感謝の思いでいっぱいです。
「忙しくて休めないんですよ」
と、もしマネージャーが言うのなら、それは
「メンバーを全然育てられていないんですよ」
の裏返しであり、恥ずかしい事だとマネージャーは思わなければなりません。
まだ成長途中のメンバーに「任せる」「委ねる」ことは勇気がいることかもしれません。
「うちは若手ばかりでみんな2-3年目なんで、無理なんですよ。」との返答もよくいただきます。
けれども「可愛い子には旅をさせよ」「獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす」という通り、「若いから無理」「まだ無理」と決めてかかった時点で無理にしているのはあなた自身だと思わなくてはいけません。
私がそうだったように、任せられ委ねられたメンバーは意気に感じ、何とか乗り切ろうと努力する、その努力こそがメンバーの成長につながると同時に、確かな自信に結びつくのだとマネージャーは信じましょう。
そう考え見ると、入社数か月にも満たない私に仕事を残していった(残さざるを得なかったとも言えますが)リーダー始め先輩たちは、太っ腹以外の何物でもないですね。
6月も半ばを過ぎ、早いところではそろそろ夏季休暇のシフトに入るところも出てくるでしょう。
「忙しくて休めないな」
ではなく、
「みんながいるから安心して休めるよ。」
と自信を持って言えるチーム作り、メンバーの育成を心がけてみませんか。