「僕は負けず嫌いなんだ。いつだって一番になりたい。
だから、このチームも会社模範、グローバルスタンダードになるチームにして、『あのチーム作ったの、あいつらだぜ』と言われたいんだ。」
熱く熱く語るTリーダーに対して、Tさんが熱くなればなるほど周囲は退いていきます。
それに気がついたのか、Tさんが我に返って私に聞きました。
「これって、ただの自分勝手ですか?」
最近、急成長のTリーダー。
以前だったら、自分の話になびかないメンバーを責めていたのに、
今は、我が身を振り返ることができています。
会うたびにステップアップしているTさんをとても愛おしく思います。
Tさんのように思うことは、全然、自分勝手ではありません。
人は誰しも自分が一番可愛いものです。
ですから自分ファーストで構いません。
自分はどうなっても構わない。メンバーの幸せが一番なんだ。
というのは、どこかに無理があるし、
それらを突き詰めていった究極の所にはやはり、自分の幸せがあるのかもしれません。
しかし、だからと言って、その自分ファーストを前面に押し出して、
「みんなも頑張って!利他こそが美しい!」と言うのは、相手からしてみれば、
「自分の目的にみんなも協力して。付き合って。」
と強要されているように感じるかもしれません。
ですから
気をつけるべきは、「言い方」「伝え方」ともう一つ。
相手にとっての目的に紐づけてあげることです。
目指す目標はチームで1つ。
目標の末に手に入れられるコト(目的)は10人10様で構わないのです。
私は自分が常にゴキゲンで、幸せに包まれていたい。(私の目的)
だから、自分の大切な人(例えば両親)が不機嫌だと自分に影響するので、
大切な人がゴキゲンでいられるよう、介護に時間を費やす。(ここに具体的目標あり)
この具体的目標が「父が500m歩けるようになる」だったとします。
父からすると、その先の目的は、「大好きな街歩きができるようになる」かもしれません。
療法士さんからすると、「病院での昇格につながる」かもしれません。
母からすると、「自分の自由な時間が増える」かもしれません。
目標は唯一共通の「父が500m歩けるようになる」ですが、
その先の目的は、関わる人、それぞれがジブンゴト化して意味づけできれば
何通りあっても良いのです。
もちろん、そこにチーム共通の目的が存在することはいたって普通です。
それに100%コミットできて、前へ向かうことができるのであれば何ら問題ありません。
しかし、現実問題はなかなか難しいもの。
私も会社員時代、「世の中の幸せのために」と大仰なことを言われても、
全くピンとこず、「いやぁ、それよりもまず、自分でしょ」と思ったものです。
ですから、ジブンゴトとして、目的設定、つまり意味づけすれば良いのです。
Tさんの場合、「チームを会社の模範にする」という目標を掲げました。
この目標に対する彼自身の目的は、
「勝ちたい。1番になりたい。称賛されたい。」などがあります。
けれども、あくまでもこれは、Tさん個人のモノ。
例えばチーム全体の目的として、
「全員が今よりもそれぞれが望む方向へステップアップする」
と設定します。
これらに対して、メンバーそれぞれが、ジブンゴト化した目的を持てるよう(意味づけ)サポートしてあげるのです。
例えば、A君は、営業のエキスパートになって稼ぎたい!
A君の希望とチームの目標、目的はバラバラ分離したものではなく、
チームをNo.1にして模範にしていく中で、A君が営業エキスパートとして
必要なコトを学び、実践していくのです。
模範チームであれば、誰よりも稼ぐ=お客様からの信頼度が高く、リピート率が高い模範営業がいても不思議ではありません。
つまり、A君が模範営業マンを目指すこととチームの目標である模範チームとなることは
完全にリンクしており、A君がチーム目標のために頑張ることは、
すなわち、自分のために頑張ることと同義なのです。
BさんもCさんも、みんな、考え方は同じです。
肝は、ジブンゴト化することです。
冒頭のTリーダーは、その後、メンバーと面談を地道に続け、
チームを会社模範にすることと、
それぞれのメンバーのジブンゴト化を見事に紐づけ、
おまけに、「あのチーム作ったの、あいつらだぜ!」
という夢を共に見る、まさにドリームチームを創り上げ、
目下のところ邁進中です。
なかなかスタートを切れなかったTさんのチームですが、
全員が同じところを見つめて、
なおかつ、自分のためでもあるミッションに向けて走り出した、
そのチームは勢いもありますし、スピードも加速度的に増しています。
最初、戸惑っていたように感じても、
しっかりと土台を整えて発信した方が、結果的には順調に進むという証でもありますね。
「これって、自分勝手でしょうか?」
良いのですよ。
皆、自分は可愛いのですから。
ただ、それを相手に押し付けるのではなく、
相手がジブンゴトとして考え、行動に移せるよう、
それを丁寧にリードしてさえ上げれば、
チームは立派に機能するのです。
あなたは会社の目標、ジブンゴト化できていますか?