戦略人事組織開発

最終回 未来志向のEVP:Z世代、DEI、Well-beingとどうつなげるか?

EVP(従業員への価値提案)は、過去を整理する「棚卸し」にとどまるものではありません。
むしろ、企業の未来をデザインする設計図であり、変化の激しい時代を生き抜くための「羅針盤」です。

特に、Z世代の価値観の変化、DEI(多様性・公平性・包摂性)への取り組み、
Well-being(心身の健康と充実)への関心など、
働く人々の意識が多様化するなかで、EVPも次のフェーズへ進化する必要があります。

今回は、EVPを「未来につなげる視点」を中心に、3つの切り口から考えてみます。

【1】若手の価値観とEVP──「意味」「対話」「リアルさ」をどう届けるか?

Z世代をはじめとする若手の就職観は、「安定」よりも「納得」に軸が移っています。

  • 「自分が何のために働いているのか」
  • 「誰と、どんな価値観で働くのか」
  • 「上司や会社は、自分の話を『本当に』聞いてくれるか」

表面だけのキラキラしたスローガンや、耳ざわりの良いお仕着せの理念は、見抜かれます。
彼らに届くEVPとは、「意味のある仕事ができる」「対話ができる」「嘘くさくない」という
三拍子が揃っているものです。

たとえば、ある中小企業で若手社員向けにヒアリングをした際、
「自分のアイデアが実際に取り入れられて、サービスが変わったのが嬉しかった」という声が上がりました。
その企業では、「楽しくなければ仕事じゃない」「変化は成長」というEVPを打ち出した結果、
若手社員の共感を得ることができました。


「一方的に与えるEVP」ではなく、「一緒につくるEVP」へと進化させることが、未来志向の鍵になります。

【2】DEI視点でのEVP──「全員が『当事者』になれる」言葉へ

DEI(Diversity, Equity, Inclusion)は、もはや一部の企業だけが掲げる意識高い系のテーマではありません。
むしろ、EVPにおいて「誰のための価値なのか?」を考える上で、避けては通れない視点です。

・「多様な人が活躍できる」と言うなら、その根拠は?
・誰か一部の人だけが恩恵を受けるようなEVPになっていないか?
・制度だけでなく、日常の言葉やふるまいに反映されているか?

ある女性社員が言った、「この会社だから、私は出産後もキャリアを築いていける」という言葉。
その企業では、「互いに支え合う」のワードをEVPに盛り込み、
結果として、性別や年齢を問わない育児や介護との両立支援の仕組みが広がっていきました。

DEIをEVPに組み込むとは、「制度を整えること」ではなく、「価値を再定義すること」です。
誰一人として「傍観者」にさせない言葉を選ぶ必要があります。

【3】Well-beingとEVP 「業績か幸福か」ではなく「両方あるべき時代」へ

「業績を上げるには、多少の我慢は必要」
「働きがいはあるけど、キツい」

こうした昭和型の価値観は、もはや通用しなくなってきています。
今、EVPに求められているのは、「成果」と「健康」が共存する環境を提示することです。

  • 身体的な健康(健康診断・労働時間の適正化)
  • 精神的な安心(心理的安全性・ハラスメントゼロ)
  • 社会的なつながり(感謝される・仲間を感じる)
  • 意味のある仕事(社会的意義・自己実現)

ある製造業の中堅企業では、福利厚生を拡充するよりも、
「雑談歓迎」や「『ありがとう』が溢れる」をEVPに盛り込み、
シャッフルランチやThanks活動を行ったところ、離職率が大幅に減少しました。

Well-beingの追求は、結果的にパフォーマンスの向上に直結する時代です。
EVPには「どう働くか」だけでなく、「どう生きるか」も含める視点が求められています。

EVPは、未来の「組織文化」をつくる道具

EVPは、理想を語るだけのスローガンではありません。
現場で育ち、行動を変え、未来をつくる「実践的な約束」です。

  • 「いまの延長線上」に未来を見せるのか
  • 「まだない価値」に挑戦する旗を掲げるのか

どちらを選ぶかで、企業文化は大きく変わります。

若手世代が共感し、DEIに配慮があり、Well-beingを支えるEVP──
それは、未来の仲間たちに向けた「ラブレター」でもあります。
どんな関係性を築きたいか。どんな社会に貢献したいのか。
EVPは、その答えを、言葉として、文化として、示すものなのです。

▼ EVPの現在地を確認したい方へ
「EVPチェックシート」はこちらからダウンロードできます。

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