多くの企業で、評価制度が形骸化しています。
「手間ばかりかかる」
「納得感がない」
「結局、給与調整のための儀式」
こうした声が出るとすれば、運用以前の問題として、 評価制度が組織に合っていない可能性を疑うべきです。
制度そのものがズレていれば、どれだけ丁寧に運用しても機能しません。
よくある誤解:評価制度は「外から与える動機づけ」の道具ではない
評価制度を、 「報酬調整」「罰と賞のコントロール」 として扱ってしまうと、必ず制度は腐ります。
外側からコントロールしようとするほど、 働く人は「やらされ感」を抱き、自発的成長から遠ざかるからです。
本来、評価は内側からの成長意欲を引き出すための仕組みであるべきです。
ハウツー本どおりに作っても、うまくいかない理由
評価制度のハウツー本は、あくまで「考え方」を示しているだけです。
その通りに作れば「正解」になるわけではありません。
実際に現場で起きているのは、 教科書どおり=自社らしさの喪失 という状態です。
フォーマットも理論も整っていながら、 社員が「頑張ろう」と思えない制度が量産されている。
これこそ、本質的な失敗です。
評価制度の本質:一人ひとりの成長が組織の成長につながる
評価制度は、査定のために存在するものではありません。
・社員が自身の成長を実感できる
・上司が部下の可能性を引き出せる
・組織が未来に向けた力をためていける
こうした「成長の連鎖」をつくるためのツールです。
私はこれを、 「成長支援ツール」あるいは「自発的成長記録」 と呼んでいます。
無機質な管理ではなく、 人の可能性を育てるための構造に変える必要があります。
戦略とつながらない評価制度は、必ず形骸化する
どれほど魅力的な評価基準であっても、 企業戦略と結びついていなければ機能しません。
たとえば、 「イノベーション創出」を戦略目標に掲げながら、 評価項目が「ミスゼロ」「前例踏襲」に偏っていれば、 社員は挑戦より保守を選びます。
戦略で求められる能力・役割があり、 それを行動基準に翻訳し、 その行動が評価項目となる。
この「戦略ドリブンの連鎖」が整っていない制度は、 軸がないまま運用され、 結果として形骸化します。
「自社らしさ」はどこに組み込むべきか
企業が大切にしている価値観(コアバリュー)、 明文化されていなくても守ろうとしている風土、 そして描く未来像。
これらを評価項目や行動基準に「翻訳」することが、 評価制度に魂を吹き込む作業です。
形式を整えるより先に、 「我々は何を大切にしたいのか」 を基点にしなければ、制度は社員の心に届きません。
ある企業で起きたこと:ユニークさではなく「合致感」が評価された
評価制度をゼロから作り直すご支援をした企業の社長さんから、 「ワクワクする」と言われたことがあります。
その理由はユニークさやオリジナリティ満載だったからではありません。
その企業様が大切にしている価値観や未来像を、 制度がそのまま反映していたからです。
標準的なモデルをそのまま当てはめるのではなく、 組織のリアリティに沿って再構築した結果、 「これなら腹落ちする」 という設計になったのです。
評価制度は、組織の未来を描く設計図である
評価制度が「いまひとつ合わない」と感じるとき、 それは運用の問題ではなく、 制度そのものが自社を映していないサインかもしれません。
あなたの会社の価値観、風土、未来像は、 評価制度のどこに表れていますか?
評価制度は、 組織がどんな未来を描き、どのように成長したいのかを形にする設計図です。
制度が企業の「らしさ」を宿すとき、 それはようやく「機能する評価制度」へと変わります。
自社の評価制度を見直す3つのチェックポイント
最後に、現在の評価制度が機能しているかを確認するための チェックポイントをお伝えします。
1. 戦略整合性:経営戦略と評価項目は連動しているか?
経営が目指す方向性と、日々評価される行動が一致していなければ、 社員は「何をすべきか」の判断に迷います。
2. 価値観の反映:コアバリューが行動基準に翻訳されているか?
大切にしたい価値観が、具体的な評価項目として可視化されていなければ、 理念は飾りになり、行動には結びつきません。
3. 成長支援性:社員が「成長したい」と思える仕組みになっているか?
評価が査定や管理のためだけに使われているなら、 社員は受け身になり、自発的な成長は生まれません。
ひとつでも「NO」があれば、 運用改善ではなく、設計思想の見直しを検討すべきタイミングです。
評価制度は、あなたの会社の未来を形にする設計図です。
その設計図に、会社の「らしさ」は映っているでしょうか。
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