戦略人事

50歳からのキャリアの選択。何を優先するのか?

この3か月で、3人のエグゼクティブからキャリア相談を受けた。
いずれもプライム企業の要職に就き、ハイサラリーを得ている50代の男女だ。
彼らが口にしたのは、同じ問いだった。

「残るべきか、新たなステージに踏み出すべきか」

安定した地位。周囲から一目置かれる肩書。
それでも、彼らは迷っていた。

「今、手にしているモノを投げ捨てて、新たな世界へ飛び出すことは、自分にとって、本当に正しいことなのか?」 と。

私が投げかけた「問い」

信頼できる先輩や恩師に相談して、真逆のアドバイスをもらい、かえってわからなくなったという人もいた。

相談を受けた私が行ったのは、コーチングだ。

なぜなら、決めるのは本人だし、答えを出せるのも本人しかいないからだ。
私にできるのは、問いを投げかけ、その人が自分自身と対話する場をつくることだけである。

「迷っている理由には、どんなものがありますか?全て教えてください。」
「あなたを不安にさせているものは、どんなコトですか?」
「踏み出して失敗した時と、踏み出せなかったと後悔し続ける時、悔いが残るのはどちらですか?その理由は?」

様々な角度から問いを投げかけた。
自分の心の声に耳を傾け、それに正面から向き合ってもらった。

3人が選んだ道

期せずして、3人ともが安定・高年収・肩書を手放し、チャレンジする方向へ舵を切った。
理由は3人3様だ。
しかし、共通していたことがある。

ひとつは、自分が最も大切にしたい価値観と恐れや不安との間で、価値観を守り抜きたいという強い想いに気づいたこと。
もうひとつは、チャレンジへの不安や恐れから目を逸らさず、その正体を見極めることができたこと。

そして何より、65歳定年でキャリアが終わるのではなく、人生100年時代において、これからの50年をどう生きたいのかを考えたことだ。
残り10年余りではなく、まだ50年もある。
その視座に立った時、彼らの答えは明確になった。

もはや例外ではない時代

50歳からのキャリアチェンジは、もはや珍しいことではない。
他人がうらやむポジションや年収を手放すことも、レアケースではなくなってきた。
終身雇用が前提だった時代は、確実に終わりつつある。

これを、企業はどう捉えるべきか。

「優秀な人材の流出」と嘆くのか。
それとも、「育成の成果が外で花開く」と捉えるのか。

それは、経営者の価値観次第だ。

私個人の意見を述べさせてもらうなら、残り10年ちょっとをしがみ付いて過ごすよりも、思い切ってチャレンジして、外から見た我が社に意見してもらう、協業できるようになる——そんな存在に育ってくれたことを、嬉しく思える経営者でありたい。

もちろん、社内に残ることが悪いと言っているのではない。
社外に出ることが正解だとも思わない。

大切なのは、その人が何を選んだかではなく、その人が自分自身と向き合い、納得して選んだかどうかだ。

もし、恐れや惰性で残っているのなら、その10年は本人にとっても組織にとっても不幸だろう。
逆に、心から「ここで成し遂げたいことがある」と思って残るのなら、それは素晴らしい選択だ。

外に出る選択をした人に対しても、同じだ。

「もったいない」「裏切られた」と感じるのではなく、その決断を尊重し、応援できるかどうか。
それが、経営者としての器を問われる場面だと、私は思う。

もちろん、ずっとこの会社で頑張り続けたいと思ってもらえるのは大歓迎だ。
しかし、縛り付けるのではなく、最後は誰であっても、その人が最も納得して選んだ人生の選択肢を応援できる人でありたい。

あなたは、自社のエースやエグゼクティブの「チャレンジ」をどのように捉えるだろうか?

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