マネジメント・リーダーシップ誰だって変わることができる

「強み」で勝負? 「好き」で勝負?

「下手の横好き」という言葉がある通り、人は好きだからと言ってその事が優れてできるとは限りません。
デザインの仕事が好き! 編集の仕事が好き! 講師の仕事が好き! と言っても、デザインが上手いかどうかは別問題。編集も講師もまたしかり。
そう、「好き」と「できる」とは違うのです。

かつて私が勤めていた会社では「好き」で転職してくる人が沢山いました。
当時の社長の考え方はこうでした。
「強み」と「好き」がイコールなら最高だが、「好き」が強みとが遠い場合、「好きだけ」で成果を出すことは難しく、または成果を出すまでにはかなり長い時間がかかり、その間、成果を出せないために社内で周囲に対して肩身が狭い思いをしたり、成果が出ないことを本人が思い悩んだりすることの方が多い。だから、人は「好き」で勝負するのではなく、「強み」で勝負した方が結果的に幸せになる。

実際、営業中心の組織だったため、どんなに扱っている商品やサービスが好きでも売上という成果を何年も出すことが出来なかったり、思い入れが強すぎて上司や同僚、お客様からの声が耳に入らなかったりすると当の本人が頑張った結果が逆効果となってクレームが頻発したりということがありました。
そんな時、私はメンバーと一緒にメンバー個人のSWOT分析を行い、「強みで勝負した方が幸せかもよ。」と何度も言うのでした。
社長の考えがそうだというだけではなく、私自身、そう信じて疑っていなかったからです。
弱み(=好き)を強みに変えて行くよりも、強みを好きになる方がきっと簡単だし幸せへの近道に違いないと思っていました。

あれから6-7年が経ちました。
世の中の価値観はどんどん変わってきて、人の「幸せ」の価値観も大きく変わってきました。
そして、私の価値観も。
「勝つ」とか「負ける」とか「目標達成」とか「一番」とか、傍目にも分かりやすいものの勝ち負けに幸せの価値を置くのではなく、自分の中の気持ちの充足度が幸せと感じるかどうかの尺度に変わりました。
私の場合の充足度=満たされている感とは、「人のお役に立てている」「感謝の気持ちに溢れている」「誰かの笑顔・幸せをほんの少しでもお手伝いできた」「五毒(怒り・イライラ、不平不満、愚痴、文句、言い訳)がない」「穏やかな気持ちでいられる」などです。
かつては、人からの称賛が欲しかったけど、今は感謝される方が嬉しいし、誰かに感謝しているのが良い。
かつては、がむしゃらに頑張ることを良しとしていたけど、今は穏やかでにこやかな自分が好き。
かつては、一番になることを目指していたけど、今は誰かの小さなのお役に立てることを目指している。

自分の「大切なモノ」が大きく変わったことを考える時、「強みで勝負した方が幸せ」というのは「勝つことが幸せ」だと私の価値観で一方的に決めつけていた、私のとんでもない傲慢以外の何物でもないと気がつきました。

勿論、チームを預かるリーダーとして、経営者として、「いつまでも結果が出ないメンバー」というのは困ります。いくら本人が好きで頑張っていても、他のメンバーへの影響も少なからずあるでしょう。
人件費がかかっているわけですから、好きだけではなく成果を出してほしいと思う気持ちもあるでしょう。
よほど経済的ゆとり、人的余裕があるチームなら別ですが。
しかし、個人の幸せということを考えた時、前述の通り、好きなことを諦めずにやり続け、最終的にいつか結果が出た時のことを思うと、「好き」を頑張る方が良いに違いありません。
いくら強み(うまくできる)であっても好きでないことをやり続けるのは苦痛以外の何物でもありませんし、「勝つ=幸せ」でなければ、そういう強みで勝てたからと言って、それを好きになるのは難しいと思うからです。

究極のところ、「好き」を頑張れて個人の幸せを追求できるチームづくりと、そんなチームを運営することができるリーダー(経営者)を私自身が目指すと共に、そういうリーダーが一人でも多く世に出る(勝ち負けだけで測るのではない)お手伝いを私自身が行っていくことがMy mission だと思うのでした。

などという事を考えていた時、イギリスの哲学者 アラン・ワッツ氏の有名なスピーチが知人のSNSの投稿に上がっていました。
世の中は確実に変わってきている。
争う、競争の世界ではなく、共楽、癒し、笑顔とぬくもりの世界へ。
確信にも似た思いがしました。

【What do you desire? 君が望むものはなんですか? 】 By Alan Watts

What makes you itch?
君が欲しくてたまらないものはなんですか?

What sort of a situation would you like?も
どんな状況を君は望んでいるんですか?

Let’s suppose, I do this often in vocational guidance of students, they come to me and say, “Well, ah, we’re getting out of college and we have the faintest idea what we want to do”.
例えば・・・
私はよく学生の進路相談に乗ります。彼らは私のところに来て、「大学生活も終わろうとしているのに、これから自分が何をしたいのかが分からないんです。」と言う。

So I always ask the question, “what would you like to do if money were no object? How would you really enjoy spending your life?”
だから私はいつもこう質問します。「お金がこの世に存在しなかったら、君は何をしたいの?どうやって君の人生を心から楽しみたい?」

Well, it’s so amazing as a result of our kind of educational system, crowds of students say, “Well, we’d like to be painters, we’d like to be poets, we’d like to be writers, but as everybody knows you can’t earn any money that way.”
すると面白いことに今の教育を受けた学生たちは、「画家になりたい、詩人になりたい、作家になりたい。でもそれじゃあ稼げないないってみんな知っている。」と口をそろえて言うのです。

Or another person says well, I’d like to live an out-of-doors life and ride horses.
また別の学生は、「私は馬に乗ってアウトドアな生活をしたい」と言います。

I said, “You want to teach in a riding school? Let’s go through with it. What do you want to do?”
私は、「乗馬学校で教えたいの? もっと深く考えて、本当に何がしたいのかよく考えなさい」と言います。

When we finally got down to something, which the individual says he really wants to do, I will say to him, “You do that and forget the money, because, if you say that getting the money is the most important thing, you will spend your life completely wasting your time.”
何をしたいのか堀り下げていき、何がしたいかがわかったら、私は学生に言います。
「君はそれをするんだ。お金のことは忘れて。だって、もし君が稼ぐことが一番大切なことだと言うのなら、それは人生の時間を全く無駄に過ごすことになるからだ。」

You’ll be doing things you don’t like doing in order to go on living, that is to go on doing things you don’t like doing, which is stupid.
生きるためにしたくない仕事をして稼ぐということをしていれば、それをやり続ける人生になってしまう。そんなことは実に馬鹿げている。

Better to have a short life that is full of what you like doing than a long life spent in a miserable way.
そんなみじめな状態で長生きするよりも、短い人生でもしたいことをして過ごす方が良い。

And after all, if you do really like what you’re doing, it doesn’t matter what it is, you can eventually turn it – you could eventually become a master of it.
結局のところ、何でも構わない。本当に好きなことを一生懸命やっていれば、君はいつか必ずその達人になれるだろう。

It’s the only way to become a master of something, to be really with it.
それが「好きこそものの上手なれ」なのだ。

And then you’ll be able to get a good fee for whatever it is.
やがて、君はそれなりの報酬を得られるようになるだろう。

So don’t worry too much. That’s everybody is – somebody is interested in everything, anything you can be interested in, you will find others will.
だから心配はいらない。必ず興味を持つ人が出てくる。君い共感してくれる人も出てくる。

But it’s absolutely stupid to spend your time doing things you don’t like, in order to go on spending things you don’t like, doing things you don’t like and to teach our children to follow in the same track.
しかし、やりたくないコトをして過ごすなんて、絶対に馬鹿げている。やりたくないことに時間を費やすのは、自分の子どもたちにまで同じ道を辿るように教えているのと同じだ。

See what we are doing is we’re bringing up children and educating to live the same sort of lives we are living.
だから、子供に自分と同じような道を歩むように教育していないかどうか、自分の行動をよく見直すことだ。

In order that they may justify themselves and find satisfaction in life by bringing up their children to bring up their children to do the same thing, so it’s all retch and no vomit – it never gets there.
本当はイヤでイヤで仕方がないのに、いつまでもどうしようもない状態でいながら、自分を正当化して自己満足を得るために、同じようなやり方で子供たちを育てているのだ。

And so, therefore, it’s so important to consider this question:
だから、この質問をしっかりと考えることがとても大切なんだ。

What do I desire?
私が望むものは何か?

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