マネジメント・リーダーシップ組織開発

イライラオーラのメンバーに困っています・・・

「Aさんの『話しかけるなオーラ』が凄くって、他のメンバーがみんな、おどおどしてしまうんです・・・。」

チームメンバーAさんへの対応に万策尽きたとりーダーのSさんからご相談を頂きました。
Aさんは中堅どころの内勤スタッフで、普段は明るく冗談を飛ばしたり、後輩の面倒見もよく、何の問題もないのですが、気分の浮き沈みがとても激しく、また、Aさん自身が仕事に集中したいと思っている時など、彼女が発する周囲を寄せ付けないオーラが途轍もなくスゴイらしいのです。
ペンで机をコツコツと叩いたり、貧乏ゆすりをしてみたり。
「あ~~~、もう!」と声を発しながら髪がグシャグシャになるくらいに手で頭を掻きむしったり。
オフィスのドアをバタン!と大きな音で閉めて出ていくこともあれば、自らが机を両手でドン!と叩いて鬼の形相で立ち上がったかたと思うと、そのまんまどこかへ行ってしまうこともあります。

「いえ、普段はとてもいい人なんですけど、負のオーラが一旦出てくると、みんなは腫れ物に触るような感じになって、お客様からかかってきた電話に声を発して対応するのさえも憚られるほどに気を使わなければいけないんです。」

Sさんの悲痛な叫びに、私はうんうんと頷きながら話を聞いていました。
実は私もかつて、Aさんのようなメンバー、Kちゃんと一緒に仕事をしたことがあります。
最初は厄介な子だと思って手を焼いていましたが、Kちゃんのことを理解することから始めようと、ひたすら「知る努力」をしたことを思い出しました。

Kちゃんがイライラするのはどんな時なのか?
負のオーラを発している自覚はKちゃん自身あるのか?
その時、Kちゃんは何を感じ、何を思っているのか?
負のオーラの代わりに「何か」をすることによって、Kちゃんのネガティブ行動をポジティブ行動に変えることはできないか

時間をかけて、ゆっくりじっくり何度もKちゃんと話をしたのです。
Kちゃんは、自分がイライラしている自覚も、周囲をビクつかせる行動をしている自覚もありました。
それでも「抑えられない・・・」と言うのです。

しかし・・・・
彼女がイライラの極致にあっても、その時に来客があったりお客様から電話があると、そのイライラを完全に封じ込めて完璧なまでのお客様対応ができていました。
と言うことは、抑えられないのではなく、メンバーに甘えているに過ぎないと私は判断しました。
「違うよ、甘えてるんだよ!」
そう面と言っても受け入れるKちゃんではありません。
皆に申し訳ないと口では言いながら、ネガティブ行動を抑えられないKちゃんに私が取った行動は、Kちゃんのイライラ行動を完全無視すること、彼女の負のオーラをなかった事のように周囲が普通に振舞うことでした。
もちろん、他のメンバー全員に協力をお願いしてのことです。

これまではKちゃんがイライラし始めると、みんな息を潜めて存在感を消して・・・ ととても気を使っていましたが、それらを一切やめて、普通のままでいることにしたのです。
これは、「おもちゃ買って~」と寝転んで泣きながら両手をバタつかせている子供に対して、その行動を全く無視するのと同じ考え方です。
対応するのではなく、なかった事にする。
マイナス行動を受け止めずにスルーするということです。

最初、Kちゃんのイライラ度は逆に増しました。
しかし毎回毎回、彼女の負のオーラが無視され続けた結果、Kちゃんは負のオーラを出すことで自らをコントロールするのではなく、全く別の方法を模索するようになりました。
自分以外の誰かや何かにイライラをぶつけるのではなく、深呼吸をしたりコーヒーを飲んだり、屋上に上がって新鮮な空気を吸って気分転換を計ったり、自分で自分のご機嫌をコントロールする努力を始めたのです。

「みんなに申し訳ないとは思っていますが、抑えられないんです。」
と最初言っていたKちゃんですが、
「甘えですね、私。ホント、イヤなやつでした。」
と半年後には苦笑いしながら明るく語ってくれました。

AさんがKちゃんと同じかどうかは分かりません。
しかし言えることは、Aさんの問題はAさん自身が何とかすべきことであり、それをリーダーのSさんが何とかしてあげることなどできません。
できるのはその手助けだけです。

Sさんは、リーダーだから自分が何とかしなければと、逆にSさんがAさんの言動をコントロールしようと試みていたようですが、それは全くの逆効果だと感じたようです。
問題解決のハンドルをその当事者であるAさんにしっかりと握ってもらうために、まずはAさんとちゃんと向き合おうと決めたSさん。
「イライラが始まると本当に面倒だし、私自身、逃げていたのかもしれません。」
そう言ってくれたSさんは、Aさんをコントロールしようとか、Aさんに勝とうという気持ちを完全に手放し、チームの雰囲気を健全に保ちたい、その思いだけが見えて取れました。

一朝一夕に解決する問題ではありません。
しかし、Aさんと向き合うと決心したSさんの気持ちは必ずやAさんに届き、良い方向へ転じていくに違いないと私は信じています。

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