「生存の欲求」とは、人間が生命を維持するために持つ最も基本的な欲求です。
食欲、睡眠欲、性欲といった本能的なものに加え、安心・安全、安定、健康などが含まれます。
心理学者マズローの「段階説」では、生存の欲求は最優先で満たされるべきとされています。
一方で、心理学者ウィリアム・グラッサーは、「欲求には個人差があり、それぞれ器の大きさが異なる」と述べています。
グラッサーの考え方に基づくと、昨日までお伝えしてきた他の欲求と同様、生存の欲求の器の大きさが人によって異なります。
我が身の危険を顧みずに危険な任務にあたる自衛隊や消防士、警察の方々。
危険な紛争地域でも確かな報道を世界に届けようと進んでいくジャーナリスト。
未知との病原菌との戦いを続けてきた医学者や科学者たち。
極端な例では、歪んだ使命感で行われる自爆テロ。
グラッサーの考え方で言えば、彼らの生存の欲求の器はとても小さいのだと思います。
「ちびまる子ちゃん」に出てくる、まる子の親友たまちゃんは、しっかり者で安定志向のキャラクターですね。
まるちゃんに誘われて危険な事をする際、最初に心配や警戒感を示してリスクを避ける慎重な性格から
生存の欲求が強い面が伺えます。
この考え方を部下育成に応用することで、慎重派の部下を適切に支援し、高いパフォーマンスを引き出すことが可能になります。
慎重派の部下への対応:生存の欲求を満たす方法
1. 安心・安全を担保する環境を作る
生存の欲求が強い部下は、不安を感じる環境では本来の力を発揮できません。
事例:
私のチームにいたAさんは、「石橋を叩いても渡らない」と言えるほど慎重派でした。
初めはその姿勢にイライラしましたが、彼女の生存の欲求を理解してからは、彼女に合った対応、指示の出し方に工夫したことで、互いにとても良い関係性に転じ、また、彼女も高いパフォーマンスを出してくれるようになりました。
生存の欲求が強いAさんは、私からの叱責は、安心安全とは対極の状態ですから、ひどく欲求が阻害されることに他ありません。
ですから、彼女に注意しなければならない時は、
伝え方を気をつけるだけでなく、彼女の安心・安全が担保されるような物理的状況を作るように工夫をしました。
2. 変化を徐々に慣れさせる
生存の欲求が強い部下は、変化に対する恐れが大きい傾向があります。
そのため、一気に大きな変化を求めるのではなく、小さな変化から始め、少しずつ慣らすことが重要です。
具体例:
Aさんに小さな成功体験を積ませるため、「金魚鉢サイズ」のチャレンジを繰り返してもらいました。
また、失敗を「経験知」として蓄積するノートを作成。
これにより、彼女の「楽しみの欲求」も満たすことができ、次第に自信をつけていきました。
3. 否定的なフィードバックを避ける
叱責や過度なプレッシャーは、生存の欲求を強く刺激し、モチベーションを損なう可能性があります。
代わりに、建設的なフィードバックやポジティブなコミュニケーションを心がけましょう。
部下育成で「欲求の違い」を活かす方法
生存の欲求が強い部下の特徴
- 慎重で安全第一
- 変化を嫌い、現状維持を好む
- 失敗を恐れ、新しい挑戦を避ける傾向がある
生存の欲求が弱い部下の特徴
- 変化やリスクに対して抵抗が少ない
- 挑戦を楽しむ傾向がある
- 安定よりも自由や成果を優先する
生存の欲求が強い部下を、「臆病」「やる気がない」と捉えるのではなく、欲求のプロフィールを理解してアプローチを工夫することが大切です。
5日間にわたって、「DNAに組み込まれている5つの価値観」
「愛・所属」「力・価値」「楽しみ」「自由」「生存」についてお話してきました。
特徴は、「器の大きさが違う」「満たし方は人それぞれ」 です。
また、複数の欲求が相互に左右し合って人の行動に影響を与えます。
まず、自分の欲求のプロフィールを知り、そして部下や大切な人のプロフィールを知ることで、お互いの関係性が今まで以上に良くなっていくはずです。
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