大企業による不祥事のニュースが続いています。是正を社内通告した後にも改善がされず、不正が引き続き行われている事態に、「通達が隅々まで行き届いていなかった」とするコメントもありました。
本当にそうなのかなぁ。通達を知らなかったのかなぁ。
ついつい、そんな見方をしてしまいます。
数年前、某業界トップ企業様のお手伝いをさせていただきました。大きな不祥事が世間を騒がせた直後のお手伝いでした。しかし、問題が世間に明るみになる約3カ月前、社内調査では既に問題が発覚しており、監督官庁からの調査が入るか入らないかという時期に最初のご相談を頂きました。
人事・人材開発部門のご担当者様はもちろんのこと、経営層の皆様にも非常に大きな危機感がありました。それは、問題が世の中に報道され世間に騒がれることにより業績に大きな影響が出ることもありますが、同時に、会社の資産と謳う社員がどれだけ傷つくかということをとても危惧しておられました。
不祥事が起こったのは、その現場に問題があったからです。しかしそれはたまたま明るみに出た一例であり、問題の本質はもっと他のところにあり、それを根本的に洗い出し、全ての膿を完全に出し切った上で、何年かかろうとも新たに生まれ変わらなければ企業の存続は難しいとの強い決意が経営層にも人事・人材開発ご担当者様にもありました。そのため、前例に捕らわれない新たな取り組みがなされ、思い切った大改革が行われました。
その企業様のお手伝いでとても印象的だったことが2つあります。
1つは経営層と現場には驚くほどの「温度差」があったこと。
2つ目は、現場の経営層に対する「非常に強い不信感」があったこと。
1つ目の温度差はよくある話ですが、2つ目の不信感は半端なものではなく、長い間をかけて出来上がってしまった恨みや憎しみにも似たドロドロしたものでした。
新しい船出をどんなに経営が訴えても、この経営に対する根強い不信感を払拭しなければ、結局のところは何も変わらず上手くいかない。そのためには、経営と現場がまずは歩み寄ること、本音で話し合うことが何よりも大切であり、そのために私たちができることを考えました。
経営も現場も、会社が傾いてしまえばいいとは誰も思っていないはず。しかし、ある時をきっかけにズレてしまった思いは時間と共にどんどんと離れていき、抜き差しならない非常事態に陥っても尚まだ、思いを一つにすることが難しい状態のまま、互いに歩み寄ることができないこともあるのだとその時に痛感しました。
しかし、きっかけさえあれば、いきなりは無理でも必ず歩み寄り、分かり合い、また思いを一つにすることはできるはず。それは経営と現場という会社組織に限ったことではありません。夫婦でも、親子でも、友人同士でも、みな同じことが言えます。
大切なことは「きっかけ」を作ること。そしてその大前提として、今の目を背けたくなるような現状を真正面から受け止め、理解すること。そこからすべては始まるのです。もちろん、外部後方支援の立場として私たちに何よりも必要なことは「信じる」ことであるのは言うまでもありません。
不祥事のニュースに触れるたびに思います。
本質をちゃんと見極められているのだろうか。大変な時期だからこそ、我が社でお手伝いできることがあるのではないか。
元気な会社をより一層元気にするお手伝いは素敵です。
可能性がありながらくすぶってしまっている人たちが羽ばたけるようになるお手伝いも素敵です。
しかし、今、目の前で弱っている、困っている重症の企業や人たちへのお手伝い。私たち外部支援の立場から見れば、その難易度はとても高いものになりますが、それでも、そういう企業やそこで働く人たちこそ喜んでお手伝いをしたい。清風を組織に吹き込むその一助を担いたい。
ニュースを見ながら私たちが為すべきこと、為せることは何があるかと、日々、思いを巡らせております。