マネジメント・リーダーシップ組織開発

社員教育よりも先にすべきなのは

「これで全役職者、統括部門長から課長までマネジメント職は全員受講できたので、次は役員たちにお願いできますか?」
とてもありがたいことに全ての役職者の皆さんに受講いただきご好評いただいたEQ研修を、今度はその会社の役員様達にとお話を頂きました。
上場企業様の社長以下全役員。
私に務まるだろうか・・・
一瞬、そんな思いが脳裏をよぎりました。

ハラスメント研修だとか、コミュニケーション研修だったら喜んでお引き受けしたでしょう。
事実、都心の一等地に本社がそびえたつ上場企業の副社長以下役員の皆様に、そのような研修を実施させていただいたことは度々あります。オーナー企業様においても理念プロジェクトやチームビルディングなど、会長様、社長様を交えてのワークショップや研修などは、これまでにもたくさん行ってきました。
しかし、今回はEQ研修。EQは執行役員クラスまでしか経験ない・・・。
大丈夫か、私・・・・

ほんのわずかな時間、お引き受けするかどうかを迷いました。しかし、次の瞬間、こうお答えしました。
「ありがとうございます。役員の皆様もEQをご受講いただけるだなんて、とても嬉しく思います。皆様にはくれぐれもお伝えくださいませ。いつも申しておりますように、私はEQプログラムのファシリテーターであって、EQを皆さんに教える立場にはありませんし、そのような人間が出来上がった人格者ではありませんので。そこだけは、くれぐれもよろしくお願いいたします。」

すると、ご担当の部長さんが笑顔でおっしゃっいました。
「それは誰が受講対象でも尾藤さんがいつも言っていることですから、重々分かっていますよ。でも、役員だからって遠慮することなく、必要な時にはピシッと言ってもらっても構いませんからね。うちの社長も常々言っているんです。『上の者こそ自分磨きにいそしまなきゃいけないだろう。役員だからって、人として偉いわけじゃないんだから。部長以下、EQ学んでるのに、役員が疎かにしているようじゃぁ、話にならない。仕事だけできても人としてNGな役員はいらん、くらいに言ってもらって構わないから。僕にも厳しく言って構わないと講師の人に言っておいて。』と。お願いしますね。」

なんと懐の深い社長さんかと感じ入ってしまいました。
スキル研修のような業務に直結するものだけでなく、社員の皆さんの人としての成長を願ってEQを全階層に広げようとしてくださっている企業のトップの方だからこそ、このような言葉が発せられるのかと感じ入りました。

その日、偶然にも、ある雑誌のこんな記事が目に留まりました。

日本では社員教育がよく言われますが、
私はまず、
上に立つものが
自分の教育から始めるべき

だと言うんです。

大手金融機関の会長職まで務められた方の言葉でした。

これを見て、私の決意は固まりました。
私自身、人としてはまだまだ未熟。不完全極まりない凸凹の人間。
それでも、仕事上、メンバーやチーム、会社を率いていくために必要なEQが何たるかは少しは分かっているつもりだし(「できている」ということではなく)、
メンバーの苦労も、マネージャーの苦労も、そして憚りながら経営者の苦労も皆分かっている。
だからこそ、今の立場でお手伝いできるEQファシリテーションがきっとある。
「教える」のではなく(私がEQを教えるなど、とんでもない事です)、「話し合い」「考え」「共有し」「気づき」「分かち合い」「励まし合う」そんな『場』をご提供できるように最善を尽くそう。

階層が上になればなるほど、受ける研修は少なくなってしまうと言われます。
しかしそれは、業務における知識を得ようとする研修だからではないでしょうか。
どんなポジションが上がろうとも、「話し合い」「考え」「共有し」「気づき」「分かち合い」「励まし合う」ことができる上質な場は、そこにいる人たち一人ひとりに、多くの気づきと学びをもたらすはずです。
そういう「場づくり」なら、たとえ相手が誰であろうとも私はできるはず。

役員様用にアレンジしたEQプログラム。
皆さん、新入社員時代に戻ったかのようにイキイキとした表情でご参加くださり、メンバー時代やマネージャー時代のことを思い出されたり、これからもますます人間として学んでいかなければと熱い思いを語って下さったり、とても有意義な時間となり、何よりも私自身が一番、皆様からまなばせていただいたように思います。

上に立つ者こそ学ぶ

自らがそうあり続けると共に、これからは臆することなく、役員様であろうと受講対象がどなたであろうと、必要とお声が掛かればどなたにでも『気づきと学びの場づくり』をどんどんご提供していきたいと思っています。

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