マネジメント・リーダーシップ誰だって変わることができる

異なる価値観の相手をどう見るか

学生時代は気の合う仲間と一緒にいることで安心感を得られたし、イヤな思いをすることもなかったSさん。
ところが社会人になって2週間あまり。
考え方が違えばスピード感も違う、自分とは全く価値観の異なる人たちと付き合っていかなければいけないその現実に直面し、ある程度の覚悟はしていたものの、自分は果たしてやっていけるのかとすっかり落ち込んでしまいました。

確かに、人は誰しも自分と同じ価値観、考え方、ニュアンス、つまるところの「同類」を感じる人の中にいるとある種の心地よさを感じるものです。
何故なら否定されることもなければ不思議がられたり質問攻めにあうこともない。
だってみんな似てるか同じかだからです。

しかし社会人になったからにはそうはいきません。
いえ、学生時代だって自分と異なる価値観の人は周囲にたくさんいたはずですが、敢えて親しくする必要はありませんでした。
関わらないという選択肢だってありました。
ただ、会社生活ではそういうわけにはいかず、苦手だな、わけわからん!この人は、という人とも付き合っていく必要があるのです。

「なんだかね、疲れちゃって・・・。会社辞めて大学院でも行こうかな・・・。」

そう呟くSさんに、私は恩師の言葉を受け売りで送りました。

「あのね、波長の合わない人って、どうして合わないかって言うと、それは自分とは、つまりSさんとは別のモノを持っているから。
その『モノ』が何かって言うと、それは『才能』なんだよ。
能力ではなく才能。
努力して何とかなるのが能力。
そうではなく天性のものが才能ね。
例えばSさんはとっても気持ちが優しくて争いを好まず、めったに怒ることがない。これは立派な才能。
でも私はどちらかと言うと勝ち気に走りがちだし、昔はすぐにカッカしていた。その分、スピード感はあったと思うし、火中の栗を拾うくらいの勇気もあった。これは私の才能だと思う。
同じ波長の人とばかり付き合っていると、世間が狭くなる。
そうすると、まだ気づいていない自分の別の才能を見つけて育てるのが難しい。
異なる波長の人と付き合うことで、その人の才能、良いところはどこかと観察してみて、自分の才能を広げる参考にしてみる。
それもありかなって思うんだけど。
プライベートでまで合わない人と付き合えと言うのではなく、社会人として異なる人との付き合いが避けられないのなら、イヤだイヤだと思って過ごすのではなく、相手の良いところを見つけて自分の成長に生かしてみる、そんな風に考えられると、気持ちの持ちようも変わって来るんじゃないかと思うんだけどどうかなぁ。」

「才能かぁ・・・。私に才能なんてないと思っていたけど、そんな風な考え方もあるんだ・・・。」

「そうそう。だって、同じタイプか違うタイプか二者択一で考えたら、Sさんと私は違うタイプだよね。それでも私を慕ってくれるのは、何か理由があるからじゃない?
好きか嫌いかで考えるとしんどいけど、相手の才能(=良いところ)を見つけてみると、また見方も変わると思うよ。
とはいっても、なかなか難しいけどね。」

「あのね、私と尾藤さん、全然違うけど、尾藤さんのポジティブで元気で明るいところ、羨ましいなと思ってね。」

「そう?ありがとう。人によっては能天気でうるさいという人もいるけど、そんな風に私の才能を見ていてくれて、どうもありがとう。とっても嬉しいよ。」

少し考え込んでいたSさんですが、
「わかった!もう少し頑張ってみる!」
と笑顔で答えてくれました。

自分と同類の人とだけ付き合っていれば事足りるというケースはあまりなく、多くの場合は苦手な人、価値観が全く異なる人との付き合いも多少なりとも生じます。
まして、多様性とかダイバーシティとか言われている時代。
年齢、性別、国籍、宗教などのほか、さまざな趣味嗜好も含めて、自分とは全く異なる考え方や価値観の人たちとの付き合いから逃げることはできません。

波長が合わない=自分と異なる才能
そう考えることで、苦手な人に対しても少し違った見方ができるかもしれません。

あなたは波長が合わない、苦手だと感じる人はいますか?
その人にはどんな才能がありますか?

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