新型肺炎の蔓延が、この1-2週間が勝負とは言うものの、 政府指針がまだ何もなされていなかった数日前のお話です。
年度末に協力会社の皆さんが集まって基調講演と懇親会を予定している幹事会社の社長さんが、
「うちから、この集まりから感染者を出す訳にはいかない。中止か延期にした方がいいと思う。」
と仰いました。
まだ今ほど世の中は「中止」へ動いていない時。
社長の言葉を聞いた役員さんは一瞬、戸惑われたようです。
「食事を出すのは控えた方がいいでしょうが、講演は皆さん楽しみにしているし、全員が集まる機会もそうそうなくて、この前も〇〇さんが『楽しみにしています』と言っていたし、講演だけやってお土産をお渡しするというのもありじゃないでしょうか?」
たまたまその場に居合わせた私は、このお話、どのようになるのだろうかと興味深く伺っておりました。
「楽しみにしているのは分かるし、みんなが集まるのは大切なことだし、それもわかる。
けれども、後になって後悔しても始まらん。
誰も中止・延期は言い出さないけど、だからこそうちが言ってやらないと、他からは『中止にしてくれ』とは言い出しにくいんじゃないか。
△△さんと相談して、どうするか決めてくれないか。」
社長さんの毅然とした言葉に、役員の方もその思いと意図を深く汲み取られ、すぐさまアクションを起こされました。
私は話の一部始終を伺いながら、決断した社長さんとすぐに行動された役員さんに、「あぁ、私はこの方々のお手伝いができていることが本当に誇らしい」と思いました。
「右へならえ」の決断なら誰でもできます。
まだ誰も決めていない、決めることができずに様子見である時に、いち早く決断し、それも、「自分たちが決めなければ後が続けないだろう」と、その模範となる責任の重みを十分に承知した上で決断する。
しかも、前へ進む決断ではなく、退く決断ができるというのは、まさにリーダーシップの成せる技に他ありません。
また、トップの決断の表面ではなく、その深い意図を汲み取ってすぐさま行動に移した参謀たる役員さん。
優秀な参謀がいてこそ、リーダーの決断も生きるのだと、そのお手本を見た思いがしました。
うちが決めてやらないでどうするんだ!
私がやらないでどうするんだ!
リーダーである以上、このように強い思いは常に持ち合わせていたいものです。